肝臓・消化器内科

当科の特徴

 当科ではウイルス肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、肝がん、肝硬変など肝疾患を中心とした多くの消化器疾患の患者さんを紹介いただいています。また肝疾患に関する新規治療薬の開発試験も積極的に参加しております。日本消化器病学会認定施設、日本肝臓学会認定施設、日本消化器内視鏡学会指導施設、日本内科学会教育病院に指定されており、消化器内科全般の診療に力を入れています。

B型肝炎

 B型肝炎ウイルス感染は急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がん、再活性化などさまざまな病態を引き起こします。急性肝炎は性交渉などによる感染、それとともに欧米型ウイルスの増加が問題となっており、成人期の感染であっても慢性肝炎となることがあります。治療は、インターフェロン療法に加えて、2000年からの核酸アナログ製剤内服の導入により肝炎の沈静化および発がん抑制が可能となっています。さらにB型肝炎ウイルスの排除(HBs抗原陰性化)をめざした新規治療薬の臨床治療を行っています。

C型肝炎

 C型肝炎は炎症の持続により肝臓の線維化をきたし、肝硬変になると年率6~8%で肝がんが発生します。C型肝炎の治療は直接作用型経口抗ウイルス剤(DAAs:Direct Acting Antiviral Agents)が登場したことで急速に進歩し、ほぼ100%近くウイルス排除ができます。薬剤耐性の問題は、パンジェノタイプのハーボニー®、マヴィレット®、エプクルーサ®の使い分けにより解消されつつあります。また、従来ウイルス排除が不可能であった非代償性肝硬変に対してエプクルーサ®が保険適応となりました。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

 最近増加している非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の診断と治療にも積極的に取り組んでいます。線維化マーカーであるM2BPGi、Fib4 indexでの評価とともに超音波を用いて肝線維化を把握する機器を所有し(VTQ、Fibroscan)、内蔵脂肪型肥満、脂質異常症、糖尿病、高血圧症などのメタボリックシンドロームからの慢性肝炎、肝硬変の発見に努めています。またNASHに対する新規治療薬の臨床治療を行っています。

その他の非ウイルス性肝疾患

 自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)などの自己免疫異常が関与した肝疾患やアルコール性肝疾患があり、NASHや薬物性肝障害などとの鑑別診断には肝生検が必要です。当科では積極的に肝生検をおこない、組織学的に診断や病勢を評価し、最適な治療を導入しています。

肝硬変

 肝硬変では栄養士、薬剤師、看護師、理学療法士と連携し、栄養・薬剤・生活・運動指導のサポートとともに診療しております。合併する食道静脈瘤破裂例に食道静脈瘤結紮術、胃静脈瘤破裂例に対してヒストアクリル注入による止血術を行い、予防的には出血の原因となりうる病変に対し、経内視鏡的食道静脈瘤硬化術や結紮術、アルゴンプラズマでの地固め治療を行なっています。また、通常の利尿剤で効果不十分な難治性腹水例に対し、改良型腹水濾過濃縮再静注法(KM-CART)を行なっております。

肝がん

 肝がんに対しては、肝切除、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術により安全で確実な治療を行っています。また再発に対しては、状態に応じてラジオ波治療、肝動脈塞栓術、放射線療法、化学療法などを組み合わせて集学的な治療を行っております。進行した肝がんに対しては、分子標的薬などによる化学療法でQOLを保ちながら生存期間の延長を目指しています。分子標的薬の進歩は著しく、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、レンバチニブ、カボザンチニブや免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせであるベバシズマブ+アテゾリズマブ療法も行っております。

早期胃がん、大腸がん

 早期胃がん、大腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術も増加しています。また切除困難な悪性消化管狭窄に対してステント留置術を行っております。消化管内視鏡治療が困難な症例は外科と緊密に連携し、速やかな診断、治療を心がけています。

胆道系内視鏡検査

 肝障害のなかには原発性硬化性胆管炎(PSC)、IgG4関連硬化性疾患などがあり内視鏡的逆行性胆道膵管造影や生検を行っております。また、胆石症、胆管がん、膵がんなどによる閉塞性黄疸に対しては乳頭切開、砕石術、ステント留置経鼻胆道ドレナージなどの胆道系内視鏡検査を行っており、外科と緊密に連携しながら診療しています。

 地域に密着し、地域の先生方と連携しかつ患者さんに高度な医療を提供できるように今後とも努力していきたいと考えています。

統計グラフ

主な入院症例数推移

肝臓・消化器内科 主な入院症例数推移

手術数推移

肝臓・消化器内科 手術数推移

外来患者数

肝臓・消化器内科 外来患者数