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がん患者さんの5年生存率

がん患者さんの5年生存率についてー国立がん研究センター発表―

乳腺センター  西村令喜

2016年7月国立がん研究センターががん患者さんの5年相対生存率を公表しました。がんの5年生存率の全国推計値が62.1%であり、年々改善しているというものです(図1参照)。

「5年生存率」とは、「病気と診断された患者さんたちが、5年後に何%生存しているか」という値です。医学の分野で、特にがんの研究などでは頻繁に用いられるものです。なぜなら多くのがんでは、5年間生存したらそのがんは治癒したと概ね考えられるからです。図1の右側のグラフを見ていただくと分かるように、各がん腫でかなりの違いがあります。乳がんはかなり良好な数値を示していますが、すい臓ではかなり低値となっています。

がん患者さんの5年生存率について 図1

 次に乳がんの生存率について私たちが経験した患者さんのデータを示し、考えてみたいと思います。乳がんの手術後の予後(生存率)は良好であることは一般的に知られています。また、近年、がんの治療法は明らかに改良され、薬物治療においても次々に新しい治療法(薬剤)が開発されています。

 そこで、手術時期別に患者さんをグループに分け手術後の生存率をグラフに示したのが図2です。より近年に手術を行った方の方が明らかに良好な生存率を示していました(5年生存率:95%以上)。また、残念ながら再発を来した方(813名)の再発後および手術後の生存率を示したのが図3です。再発された方におきましても5年生存率は手術後5年で80%、再発後でも約50%を示していました。

がん患者さんの5年生存率について 図2
がん患者さんの5年生存率について 図3

 このように、乳がんの手術後の生存率は年々に改善されていました。今回の国立がん研究センター発表の生存率はほぼすべてのがん腫のデータをまとめたもので、改善したことについて以下のように述べています。

 一つ目は、がん検診が(まだまだ不十分ですが)普及してきたことでがんの早期発見が増え、これまでだったら進行がんで発見され5年生存できなかった人が、早期に見つかり5年以上生存したり治癒したりしているから、というものです。
 二つ目には、このデータを出した国立がん研究センターが、こう述べています。“前立腺がんや乳がんなど予後のよいがんが増えたこと(部位構成の変化、罹患年齢構成の変化)などの影響も考えられ、部位別・進行度別の詳細な分析なしに治療法の改善などが影響しているとはいえません”、と記載されています。

 わが国におけるがんの罹患率は上昇しており、2人に1人ががんに罹患すると予想されています。今後とも検診率の向上、各がん腫に応じた、各患者さんに適した治療法―すなわち治療の個別化―を目指して、真摯に取り組んでいきたいと思います。