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乳腺センター

私は妊娠、出産できますか?

もしも、乳がんになったら、妊娠、出産はできますか?患者さんの多くの方が直面する問題です。
女性として結婚、出産の時期と重なってしまっているという方、または、これからという方は少なくありません。

現代の女性は、環境やライフスタイルの変化、晩婚化により、出産を希望する年齢が高くなっています。
妊娠するために必要な卵子を育てる卵巣は、母親のおなかにいる胎児のときに、すでに卵巣の中で「卵子のもと」ができています。
女性が成長し、初経から年齢を重ねるごとに「卵子のもと」は減っていきます。
また加齢より「卵子の質」も衰えていき、出産を希望するときには妊娠しにくい年齢になっているという可能性があります。
また30代中ばから生殖能力は低下していき、42~43歳が自然妊娠の限界と考えられています。
また年齢が上がるにつれ妊娠後の流産率が高くなることから、出産できる確率はさらに低下することが知られています。

もしも、乳がんになったら
乳がんを治療していく過程で薬物(ホルモン療法・化学療法)を使用する患者さんが多くいらっしゃいます。
乳がんの再発をしないように行われる治療ですが、同時に妊娠する能力をなくしてしまう可能性があります。
下記は治療法とその問題点です。

ホルモン療法
ホルモン依存性の乳がんの増殖を促す女性ホルモン(エストロゲン)が働かないようにする治療法です。
ホルモン療法の問題点
乳がん患者さんの多くはホルモン療法をとります。おくすりを毎日飲むことが基本です。
基本的には5年間が勧められますが、患者さんのがんの状態によっては10年飲み続けることが必要な場合ということわかってきました。
性交渉は問題ありませんが、治療中はくすりにより、胎児に悪い影響を与えてしまう可能性があるため避妊が必要です。
また、閉経前の患者さんによっては月経を止める注射を行うこともあります。
仮に30歳で乳がんになってしまい、そこからホルモン療法を10年行ったとすると、治療が終了する頃には40歳になってしまいます。
月経が正常に戻ったとしても30歳の頃と比べて年齢的に自然妊娠~出産が難しい状況になっています。
化学療法
抗がん剤を使った治療方法のことです。
化学療法の問題点
化学療法を行う期間は3か月から6か月(分子標的治療を併用する場合は1年間)です。
治療期間はホルモン療法よりも短いのですが、卵巣に強いダメージを与えてしまいます。
化学療法を開始するとほとんどの患者さんは月経が止まってしまいます。
それは、化学療法によって卵巣の機能が低下してしまうからです。
治療終了後、月経が再開する場合と再開しない場合がありますが、たとえ月経が再開しても、卵巣の機能は治療前よりは低下し、閉経が早まったり、不妊になる可能性があります。

妊孕性(にんようせい=妊娠する力)を温存する

患者さんに対するがん治療は、ホルモン療法によって長期間妊娠できない期間となります。また、化学療法によって卵巣の機能にダメージを与えてしまいます。
つまり乳がんの治療の結果として将来子供を持つことが困難になる可能性があります。

ホルモン療法や化学療法のあと、月経が再開するか、卵巣にダメージがないかどうかは予測困難です。また、年齢的に自然妊娠が困難という可能性もあります。
将来の出産を希望される場合は、薬物治療開始の前にその希望を担当医に伝える必要があります。

医療者と患者さんにとって、病気を克服することが最大のゴールであるため、これまでは、がん治療によって、妊娠、出産するということを避けてきていました。
しかし最近では、医療技術の進歩やデータの蓄積によって一定の制限付きながら、妊娠する力を温存するための治療法も数多く行われるようになってきています。
それは薬物治療開始前に行われる生殖補助技術による卵子、受精卵の凍結保存です。
将来の妊娠出産のためには、乳がん治療医ならびに生殖専門医とのコミュニケーションのもと、十分に検討する必要があります。
乳がん治療医と生殖専門医から得た情報をもとに、自分のがんの予後や妊娠・出産の可能性を理解したうえで、現実的で、かつあなた自身が納得できる選択をすることが最も大切なことです。
将来の妊娠・出産について悩みがある時は担当医にご相談ください。

妊孕性(にんようせい=妊娠する力)を温存する